行動からホンネがわかる『行動観察調査』とは…?
マーケティングリサーチにおいて、消費者のニーズを探るための方法は色々ありますが、中でも、私たちイー・クオーレが得意な調査方法があります。
それは、『行動観察調査』です。
初めて聞いた方でも、この調査の魅力が伝わるように、今回は行動観察調査で消費者の潜在ニーズを探るコツや、調査のノウハウについてご紹介したいと思います。
そもそも行動観察調査とは・・?
人は、あらゆる行動をする際、本人が意識出来ている割合は全体でたったの5%と言われています。
そう、残りの95%は「無意識」なのです。
(よく氷山の一角に例えられます。水面下の部分が無意識です。)
この無意識領域からの情報を言語化し、表出することができたら…?
消費者のホンネが知りたい!
というマーケターの皆様にとっては、特に気になる内容かと思います。
そして、95%の無意識を「言語化」するのに、『行動観察調査』が有効です。
行動観察調査では、実際に被験者(=観察の対象者)とともに生活現場(買い物や調理など)に出向き、そこでの被験者の行動を、つぶさに観察していきます。
なぜそのような行動をとったのか、その行動が持つ意味について、インタビューを通じて深掘りをします。
グループインタビューや、定量アンケート調査などは、主に自分が意識出来ている5%の部分を表出させるためのものです。
行動観察調査がそれらと違う点は、実際に行った行動の「意味」を、観察と分析を通じて丁寧に洗い出していくものだからです。
「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、行動から分かることが、実はたくさんあるのです。
行動観察調査における心構えや観察視点
この調査では、観察者が「どういう心構えで実施するか」というマインドセットが、分析結果に大きく影響します。
行動観察調査を実施する上での、大切な心構えをご紹介していきましょう。
心構え その➀:相手を受容する心を持ち、フラットな気持ちで観察する。
人は、自分と違う考えや行動に対して「それは間違っている」と捉えてしまいがちです。
でもそれだと、被験者の本心に近づくことはできません。
「なぜだろう?」「どんな気持ちでこの行動をしたのだろう?」と相手の立場や状況を観察者がイメージしてみることで、その真意に近づくことができます。
もちろん、あらかじめ被験者の背景を知っておくことはとても大切です。
同じ「調理」という観察項目であっても、被験者の立場や家族構成、状況によってその目的は変わってくるからです。
「子育てに追われ時間がない、とにかく早く、時短で作りたい」のか、
「自分のご褒美に、時間をかけて美味しく丁寧に作りたい」のか、
ひとり一人違う、その人の背景を想像しながら、先入観を持たず観察することが大事です。
そして観察者がより自然に行動できるように、観察者は「透明人間」のようになって起こることすべてを受容するという気持ちで臨むことが大切です。
これは、観察後のインタビューでも大切なマインドです。
観察者の価値観で、行動をジャッジした聞き方にならないようにすること。
例えば、「なんで○○しないのですか?」と聞かれると対象者は「自分の行動は間違っていたのかな…」と信頼関係が崩れてしまう可能性があります。
相手を受け入れつつ、フラットな立場で観察・質問をしていきます。
心構え その➁:その行動には、必ず「得たい結果と感情」が存在する。
どんなに無意識に行っている行動でも、必ず「意味」が存在します。
下記の図は、被験者の行動に付随している情報をあらわしています。
人は、ある行動をとる時、何かしらの目的を成し遂げたくてその行動をとっています。そして、その行動をとることで、何かしらの感情が発生しています。
行動観察では、「あなたはどんな目的で、その行動を取ったのか?」
「その行動の結果、どんな感情を得たいのか?」を言語化していきます。
例えば、
「目の前にいる人の言動にイライラした」⇒「腕を組み、大きくため息をつきながら、背もたれにもたれかかった」
この行動で、得られる成果と、得たい感情はなんでしょうか?
ちょっと類推してみてください。
今回得られる成果は、「“私は、ちょっと今怒っていますよ”ということを、目の前の相手に分かるようにアピールしたかった」となります。
それは、イライラをぶつけて、ストレスを発散するためです。
行動の結果得られる感情は、「大きく息を吸い込んではき出すことで、少し怒りを和らげて、気持ちをクールダウンしたかった」となります。
たとえA・B・Cさんが同じ行動をとったとしても、人によって得たい結果・感情はまったく違います。
そのため観察者は、毎回新鮮な気持ちで質問をする必要があります。
例えば、下記のように「鍋をよくかきまぜる」という同じ行動を見ても目的や得たい感情は人それぞれ違うことがわかります。
心構え その➂:予め、観察の基準となる仮説を立てておく。
事前にクライアントと打ち合わせを通じて、「行動の仮説」を立てておきます。
「ここではこういう行動をして、被験者は困っているだろう」という予測のようなものです。
その上で、仮説から大きく外れた行動や理解が難しい行動がないかを見ていきます。
基準を設けておくことで、観察する際の視点がぶれなくなるという利点があります。
下記の図は、調理場面での仮説に対して被験者がとった行動をあらわしています。
赤マルの部分が仮説から外れた行動です。
このあたりを中心に聞き取りをしていきます。
また、クライアントが問題だと感じていること、悩みなども事前に聞いてどこを深堀りしていくのかを決めておくと良いでしょう。
行動観察調査の手順
それでは、実際の調査の方法をご紹介します。
◆調査の流れ◆
➀被験者に、普段通りの行動を取ってもらう(例:調理・買い物など)。
観察者は気になったポイントをメモしながら観察する。
※長時間観察をする場合は、その都度、被験者に行動の意味を質問するケースもあるが、概ねすべて終わってからまとめて質問することが多い。
途中で行動が止まり、不自然な行動になってしまうため。
➁一連の行動が終わったら、行動の振り返りをしてもらい、インタビュアーが行動の真意を深掘りする。
観察視点は、心構えのその2と3で記載した通り。
・なぜ、その行動をしたのか。それはどんな成果が得たくて行ったのか。
・その時どんな気持ちだったか?どんな感情が得たかったのか。
その行動から得られる成果と感情について、具体的な質問をして聞き取っていく。
初めに立てた仮説から大きく外れた場合や、その他複数の被験者と異なる行動が見られた際には、そのあたりを重点的に深堀りしていく。
被験者の行動を深掘りする際、無意識で行っているがゆえに質問されても答えられない…ということも多々あります。
普段は意識していない、「95%の無意識」にアクセスしているのですから、答えられなくても当然と言えます。
(むしろ、スラスラ答えられたら深い質問が出来ていないかも!?)
そんな時、私たちが用いるヒアリング方法をお伝えします。
被験者にはあらかじめ、
『行動の95%は、無意識で行われています。
ご自分が意識できているのは5%しかありません』
『無意識に行っている行動でも、必ずご自分の中に理由があります』
『無意識脳に質問してみると、必ず答えが返ってきます』
ということを伝えておきます。
被験者がじっくり自分と向き合って考えてみることで、本人も気づかなかった「ホンネ」が出てくることを期待します。
質問に対して「わからない…」というときには、
「リラックスして、ゆっくり考えてみて下さい」
「なんとなくイメージが湧いたらそれを教えてください」
などの言葉かけをします。
ただ、あまりにも質問の答えに詰まるときは
「ひょっとしたらこういう事ですか…?」
という仮説を投げかけてみることもあります。
ただ、普段から内的対話が少ない人は、言語化することに慣れていないため、質問の答えに詰まる場合があります。
ここは被験者との信頼関係をもとに、じっくり聞き取っていくことが大切です。
心理分析×行動観察調査
私たちの調査では、インタビュー結果を分析する際、心理分析(LABプロファイル)を使っています。
被験者の行動・思考の特性を把握し、それらを掛け合わせて分析することでより精度高く「行動の理由のあたり」をつけていくことができます。
心理分析は様々なカテゴリーでパターン分けすることができ、全部で13のパターンにおいて、分析することができます。
ここでは、2つのパターンについてご紹介できればと思います。
①主体性:率先して行動を起こすか、よく考えて行動するか
「主体行動」と「反映分析」という二つの分類軸があります。
主体行動は、とりあえず行動する、行動しながら考えることが特徴的です。
反映分析は、じっくり考えて状況を理解してから行動に移します。
事前の確認、検討を怠らない行動が特徴です。
②選択基準:何かを選択する際の基準
「オプション型」と「プロセス型」という分類軸があります。
オプション型は、選択肢や可能性に魅力を感じます。複数のものに同時に手を出したいマルチタスクでもあります。自分のオリジナルのやり方、アレンジが得意で、調理方法などにも特徴が見られます。
プロセス型は、説明書を読み、決められた手順で進めたいタイプ。
オプション型とは真逆なことがわかります。
被験者の行動パターンや言語から、どのパターンに当てはまるのかをみていくと、行動の理由のあたりがつけやすくなりより精度の高い分析を行うことができます。
被験者の心の奥にある「感情」「潜在ニーズ」を引き出すことができれば、商品パッケージのリニューアルや調理方法の改善、広告や店頭での効果的なPRなどに役立てていくことができるでしょう。
通常のインタビューでは出てこない、深い部分にアクセスする行動観察調査をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
みなさまの参考になりましたらとっても嬉しいです。
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